「暑い重い生臭い。のしかかるな」

「いいじゃねぇか、俺とお前の仲だろ？」

「…どんな仲だ、鬱陶しい。離れよ」

「つれねぇなあ。こんなの南蛮では挨拶だって言うぜ？」

「…伊達の入れ知恵か…」

「いい習慣だろ？　すきんしっぷって…」

「うるさい、黙れ」

「そう言うなって。今日はお前にいいモノやろうと思ってよ」

「迷惑だ」

「聞いて驚くな？　俺がいつものように海に散歩に行ったらだなあ…」

「ヒマ人め」

「どこからともなく桃が流れてきてよぉ」

「…人の話を聞け。いい加減に…」

「おもしろそうなんで拾ってみたわけよ」

「どうりで、いつにも増して磯臭いと思うたわ」

「早速食おうと切ってみたら…」

「貴様…人の話を聞けと…」

「あら不思議！　男の赤ん坊が出てきた！！」

「……付き合いきれん」

「そこで俺は名付けた…海太郎と！！」

「そこは桃太郎であろうがっっ」

「え〜だって海で拾ったし？」

「馬鹿か貴様は！！……ところで先程から……」

「ん？」

「どこを触っておる！！」

「いやぁ、俺らの子どもも出来たことだし？　後は既成事実を作るだけだろ？」

「ふざけたことを・・・っ、放せっ」

「いいじゃねえか、晴れて一児の母となったんだ」

「……誰が母かっ！」

「つうわけでよ、これからイイコトしようぜ？」

「……貴様……結局それが目的であろうがっっ」

「ちょっ、オイ、待て待て待て！！　俺らの子ども見たくねぇの？」

「黙れ！　貴様、人が大人しくしておればいい気になりおって……」

「あぶねっ、てめ、どっから……」

「やかましい！　散れっ！！」



城内に響く怒声と続く悲鳴。

郡山城は今日も平和である。